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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤について

はじめに

下肢静脈瘤とは足の表面にある静脈が拡張して蛇行してくる病気です。本来足に送られた血液は重力に逆らって心臓まで帰ってくるため、押し上げた血液がまた足のほうに下がっていかないように静脈にはいくつもの逆流防止弁があります。
ほとんどの静脈瘤は足の静脈にある逆流を防ぐための弁が故障するために起こります。
放置しておくと、皮膚が黒ずんでむくみが出てきてこむら返りやひどくなると皮膚に潰瘍ができてきます。

どんな人にできやすいですか?

  1. 妊娠後に出てくる場合が女性では50%
  2. 長時間の立ち仕事による過労
  3. 先天的または遺伝的な要素も強い
  4. 肥満の人
  5. 深部静脈が詰まっていたり静脈の流れが悪くなるほかの病気がある人

どんな症状がありますか?

初期症状
  • 足が重い感じ、特に夕方になると疲れやすい
  • 足がつったりこむら返りを起こしやすい
  • 夕方になるとふくらはぎやすねがむくんでくる
  • ふくらはぎの不自然な痛み
進行した症状
  • 見た目にも太く蛇行した血管が見える
  • 拡張した血管の周囲が黒ずんでくる
  • 擦り傷や引っかき傷が治らず傷から液が染み出す
  • 皮膚が硬くなり潰瘍ができたりする
  • 拡張した血管の中に血が固まって(血栓)それが奥の太い静脈まで詰めてしまったり(深部静脈血栓)その血栓が肺に飛んで詰まり危険な状態になる(肺塞栓、肺梗塞)

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正常の静脈はふくらはぎの筋肉が収縮(下腿筋ポンプ)することにより重力に逆らって心臓まで血液が押し上げられていきますが、その時に逆流してこないように多数の静脈弁が働きます(左図)。
静脈瘤になっている人はこの逆流防止弁が壊れてしまったために表在静脈の方に血液が逆流しどんどん太くなって静脈瘤ができてきます(右図)

静脈瘤の術前検査

手術前に超音波検査を行い、正確に静脈の逆流部位を調べる必要があります。どの部位で静脈の逆流を止めたら良いかを決定し、切除すべき静脈瘤をすべて手術前にマーキングします。

手術の必要性

静脈瘤があっても外見上の問題以外は症状がないことも多いです。しかし静脈瘤が進行し静脈血のうっ滞による足の怠さやこむら返りなどが出現し、皮膚が茶色くなって硬く変化しだすと、たとえ静脈瘤を手術して治療しても皮膚の変色硬化はあまり改善しません。
さらに進行すると皮膚潰瘍ができてきます。さらに酷くなると静脈瘤の中に血の塊(血栓)できてそれが肺に飛んで肺の血管が詰まると非常に危険な状態になります(肺塞栓、エコノミー症候群)。そうなる前に手術をして行く必要があります。

静脈瘤の治療方法

1.手術療法

静脈瘤の治療の原則はまず手術です。静脈弁が壊れて逆流している所を止める手術で次の3種類があります

A:ストリッピング手術(静脈抜去切除術) 最も根治性が高く再発が少ない方法です。当院ではこの方法を第一選択として手術を行っています、詳細は次項で説明します
B:血管内レーザー手術 静脈を全て切除するかわりに静脈内に光ファイバーを挿入して血管の内側から静脈を焼灼します。当院ではこの治療は行っておりません。
C:静脈結紮術 足の付け根や膝の裏など逆流の強いところの静脈を糸で縛って切り離します。ストリッピング手術に比べて再発率が若干高くなります。
2.硬化療法

血管の中に血管に炎症を起こして収縮させる薬(硬化剤)を入れて治療します。逆流のある静脈瘤に硬化療法のみで治療した場合、50%が3年以内に再発すると報告されています。逆流のない網目状の細い静脈瘤には効果的です

3.圧迫療法

静脈瘤専用の圧迫弾性ストッキングを履いて治療しますが、圧迫だけでは静脈瘤の進行を遅らせるのみで根本的な治療にはなりません。

当クリニックで行っている最新の静脈瘤治療について

A:大伏在静脈瘤ストリッピング手術(大伏在静脈抜去切除術)

足の付け根に原因がある場合の手術方法を説明します。前述したように静脈瘤の治療の原則は手術です。最近は麻酔方法の進歩および小さな傷で静脈瘤をすべて切除する技術が発達し、静脈瘤を全て抜き取って切除しても術後の痛みも殆どなく再発も非常に少なく術後の傷もきれいに治るため、静脈瘤の専門施設でこのストリッピング手術が行われるようになり、当院でもこの方法で行うようになりました。

1.麻酔方法:大腿神経ブロックおよび低濃度局所麻酔

静脈瘤の原因が足の付け根にある場合(大伏在静脈根部の弁不全)は足の付け根にある大腿神経の近くに、エコーで見ながら針を刺して局所麻酔薬を染みこませます。10分ほどで効き、3時間ほど麻酔効果が持続しますので術後は3時間ほどの安静が必要です。抜き取ったり切除したりする静脈瘤の周辺の皮下に薄めた局所麻酔薬をエコーで見ながら追加していきます。静脈瘤の原因が膝の裏にある場合(小伏在静脈根部の弁不全)は膝の裏の静脈瘤の根部に局所麻酔をして手術をします。表面の静脈瘤の周辺にも皮下に薄めた局所麻酔薬を追加していきます。

2.静脈瘤ストリッピング手術(大伏在静脈抜去切除術)

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小伏在静脈ストリッピング手術(小伏在静脈抜去切除術)現在のところ最も根治性が高く再発が少ない手術方法です。まず足の付け根の所に2cmほどの切開で静脈瘤の根部を糸で縛って切り離します。(❶高位結術)次に膝の内側に5mmの切開で静脈瘤を引っ張り出して中にワイヤーを入れて足の付け根まで進め、太ももの内側にある静脈瘤を全て引き抜いて取り除きます(❷静脈抜去)。最後にふくらはぎにある目立った静脈瘤は2-3mmの小さな創で出来るだけ切除します(❸静脈瘤切除)手術後は麻酔が3時間ほど効いているためベッド上で安静にして頂きます。3時間ほどたてば普通に歩いて帰宅できます。静脈瘤を切除した部分は多少出血しますので青あざのような皮下出血ができて腫れますが2-3週間で消失します。

B:小伏在静脈ストリッピング手術(小伏在静脈抜去切除術)

ここでは膝の裏に逆流の原因がある静脈瘤の場合の手術方法について説明します。
まず膝の裏の小伏在静脈の根部で弁が壊れて逆流してくる部分と抜去する小伏在静脈本幹にそってエコーで見ながら局所麻酔を行います。局所麻酔で膝裏に2cmの切開で逆流してくる静脈の根部で糸で縛って切り離し(❶高位結術)、本幹のできるだけ下の方(アキレス腱側)に5mmの小さな切開をおいてワイヤーを挿入し、小伏在静脈本幹をすべて抜き取って切除します(❷静脈抜去)。
表面に目立つ静脈瘤は2-3mmの小さな傷で出きるだけ切除します(❸静脈瘤切除)。
基本的にはAの大伏在静脈ストリッピング手術と同じ方法ですが、局所麻酔のため手術後すぐに歩いて帰れます。
静脈瘤を切除した部分は多少出血しますので青あざのような皮下出血ができて腫れますが2-3週間で消失します。

術後の合併症
  • 上記の2,3のどちらの手術も皮膚の下の浅いところのみの手術で安全な手術です
  • 静脈瘤を切除した部分は多少出血しますので青あざのような皮下出血ができて腫れますが2-3週間で消失します。
  • 術後に静脈を抜き取った部分の皮膚が少ししびれた感じになる場合がありますが殆ど1-数ヶ月で消失します。
  • 残っている静脈瘤に血栓(静脈瘤の中に血の塊ができること)や色素沈着が見られることがあります(10-20%)が、半年から1年で自然に消えていきます。
  • ごくまれにこの血栓が肺にまで飛んで肺塞栓(エコノミークラス症候群)を起こすことがあります。術後に呼吸苦、胸の痛み、動悸があれば注意が必要です。

下肢静脈瘤硬化療法

手術をしたあとに、残っている静脈瘤に対して行います。
手術の必要のない軽い静脈瘤では手術せずに硬化療法のみで治療します。使用する薬は泡状にした硬化剤で、これは血液を固めるのではなく血管壁に炎症を起こさせて静脈瘤を縮めていく治療です。
方法は点滴用の針を残っている静脈瘤に刺して1箇所につき2-3mlずつ注入していきます。
通常片方の足で数箇所行います。注入後はガーゼで数時間圧迫しておき、翌日からは通常通り、弾性ストッキングを着用してもらいます。

硬化療法後の合併症

手術と同じように血栓や色素沈着が20-30%に見られます。同様にその血栓が肺に飛ぶ肺塞栓を起こす可能性もごくまれにあります。

弾性ストッキングによる圧迫療法

静脈瘤治療の基本です。手術をした後も硬化療法のあとも約3ヶ月を目標にこの弾性ストッキング(普通のストッキングよりしまりの強い治療用の静脈瘤専用ストッキング)を履いていただきます。
履かないと治療効果が薄れる上に合併症の頻度が増えます。朝起きてから夜風呂に入るまで毎日履く必要がありますが。寝ている間は履く必要ありません。 できれば長時間の立位は避けてください。

通常の静脈瘤治療スケジュール

  1. 手術前に超音波(エコー)検査で静脈瘤のどの部位に逆流があるのかを詳しく調べ、手術で静脈を糸で縛る部位を決めます。切除する静脈全てにマーキングしておきます。
  2. 足の付け根に原因がある場合は前述した大腿神経ブロックと局所麻酔で手術を行います。術後3時間ほど安静にしてから帰宅して頂きます。膝の裏が原因の場合は局所麻酔のみで術後すぐに帰宅できます。
  3. 術後は化膿止め(抗生剤)を数日内服してもらいます。術後は静脈瘤を切除した部分は出血して腫れますので、翌日まで包帯とサポーターで圧迫しておきます。翌日の診察で圧迫をはずし防水テープで傷を覆いますので入浴できます。
  4. 術後1週間目に傷のチェックをします、問題なければ1ヶ月後の診察となります。その時に残っている静脈瘤があれば硬化療法を追加する場合があります
  5. 手術後約3ヶ月は弾性ストッキングを着用していただきます

手術にかかる費用

すべての治療は保険適応なので、手術の場合会計窓口での支払いは1割負担の御老人で12000円程度、3割負担の患者様で36000円程度です。

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