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痔について

痔でお悩みの患者様へ

ひとはみな痔主

痔は誰にでもあり症状が出ないものまで含めると成人の7割近い人に痔が認められます。軽い程度の痔であれば座薬などの治療でおさまりますが、ひどくなってくると手術が必要になってきます。手遅れになる前に治療をすれば手術で切らずに痔を取り除くことができます。

こんな症状はありませんか?

  1. 便をするたびに痛みや出血がある
  2. 便をするときにイボが出てくる、または出たままになっている
  3. いつも肛門がしめっていたりかゆみがある

痔になりやすい人

  1. 便秘の人、排便時に強くきばる人、排便時間の長いひと
  2. 出産後の人、仕事などで座る時間や立ってる時間の長い人
  3. アルコール、香辛料のとりすぎの人
  4. 体質的になりやすい人

痔には3種類あります

1. 痔核(いぼ痔)

A内痔核

奥の方にある痔で痛みが少なく出血を伴うことが多い。
ひどくなると便の時に痔が肛門の外に出てくる(脱肛)。時の中でも最も多く、後で 述べるように座薬や手術が必要になります。

B外痔核

肛門の皮膚が腫れてできる時で通常は治療の必要のないことが多いですが、中に血の塊ができると急激に痛みと腫れを伴うことがあり(血栓性外痔核)その場合は、局所麻酔をして中にある血の塊を出す必要があります。

内痔核の進行度分類

出血するが脱出はしない

○ 坐薬や軟膏治療
○ 硬化療法

脱出するが自然に入る

○ 硬化療法
○ 手術

脱出すると手で押さえないと入らない

○ 硬化療法
○ 手術

脱出したままで手で押さえても戻らない

○ 通常は手術ですが当院では硬化療法で治療できることもあります。

2. 裂肛(切れ痔)

硬くて太い便が出たときなどに肛門が切れておこる。
非常に痛い、時に出血も多いことがあります。
通常薬の治療で治ります。

3. 痔瘻(穴痔)

肛門の奥にあるくぼみから膿が広がって肛門の近くにたまり(肛門周囲膿瘍)そこから皮膚へ穴があいて、最終的に肛門の奥と皮膚とが細いトンネルでつながってしまう。
通常痛みも腫れもないが肛門周囲にできた穴から毎日少量ずつ膿がでる。
放置するとその膿の出てくる道が迷路状に広がってくる。

痔核(いぼ痔)の治療方針

当院での治療の基本理念はできるだけ痛みやダメージの少ない治療法を選択することです。
痔は命に関わる病気ではないので、できるだけ苦痛が少なく、術後の日常生活(排便や入浴など)や仕事もいつも通りできて、なおかつきれいに治ってしまう方法で治療することが患者様にとってもメリットが多く、医師にとっても合併症が少なく済む最良の方法だと考えています。
もう一つの当院の特徴は術後の苦痛を少なくするため持続麻酔薬(術後3週間痛みの感覚が鈍くなる注射)や麻酔の軟膏などを使用することにより、切除するような通常では痛みが強くなる手術でも、日帰りで翌日から通常通りの仕事や生活が出来るように工夫しています。

一言でイボ痔といってもいろんなイボ痔があります。内痔核なのか外痔核なのか、肛門ポリープや直腸脱、肛門癌の場合もあります。一般的に内痔核だけなら注射による硬化療法で切らずに治療します。外痔核もある場合は根部を糸で縛って壊死させて自然に脱落させる振り分け結紮術を併用します。内痔核と外痔核が一塊になって脱出してくる場合は内外痔核をまとめて振り分け結紮術にて処理脱落させる場合もあります。この時脱落時の出血を予防するために吸収糸(溶ける糸)で根部を結紮し硬化剤も追加して出血を予防しています。

実際の治療例を見てみましょう、症例は内外痔核の脱肛で写真左が手術前、写真右が手術後で通院終了時です。

次は各治療法について説明します。

内痔核

ジオン注を使った硬化療法(ALTA法)

新しい硬化療法として注目されているALTA法(ジオン注という硬化剤)で行います。痔核内に痔核を固めて収 縮させる(硬化剤)を注射し、時核を徐々に縮小させて出血や脱肛を治療します。通常無痛領域にある内痔核内に注射しますので、無麻酔で3-4分で終わります。痛みはほとんどありません。合併症としては軽い腹痛や微熱、大量に注射した場合は肛門が狭くなったりすることがありますので当院ではできるだけ安全に行うために量を少なくし、合併症の予防に努めています。出血のある内痔核や脱肛内痔核の中でも大きさが親指までのもの、大きくても軟らかい時に良い適応です。
基本的にほとんどの内痔核はこの硬化療法で治癒させることができます。

痔核切除術

通常の病院や肛門科で根治術として行われている手術方法で、痔核を切りとって切除して縫合する方法で、痔核の根元の動脈を結紮して切除することから結紮切除術とも言われています。
最も根治的ですが、術後の痛みも強く複数箇所切除すると術後に肛門が狭くなったりします。当院では出来るだけ内痔核に対しては硬化療法で行い、外痔核を合併する場合は外痔核のみを振り分け結紮術(後述)などで処理してできるだけ痔核の切除縫合をしないように工夫しています。
他の治療が効果的ではなくやむを得ずこの痔核切除術を行う場合でも切除範囲を少なく、持続麻酔薬も使用して出きるだけ術後に苦痛が少なくなるように工夫しています。

外痔核

血栓性外痔核

これは気ばったり下痢をしたり重いものをもったりして肛門に急激に圧力がかかったときに、肛門の皮膚の下に出血して血の塊ができる外痔核のことで、急に痛みと腫れを自覚することが多いです。小さくて痛みが軽い場合は軟膏などで吸収されるのを待ちますが、大きく痛みが強い場合は局所麻酔で5mmほど切開して中の血栓(血の塊)を取り除く手術が必要です。これも3-4分で終わり、術後の痛みはほとんどありません。術後1週間ぐらいは注射の影響で腫れたままですが、それ以降は徐々に腫れが引いていきます。

皮垂外痔核

これは肛門の外に余った皮膚のことで、多くの人の肛門に存在し、通常手術の必要はありません。しかし、肛門の違和感や便を拭き取るときに邪魔になったり擦れて痛みがでる場合もあり、この場合は手術になります。

外痔核振り分け結紮術

当院では皮垂の手術は、この振り分け結紮術で行うことが多いです。これは余って垂れ下がった皮膚を根元で半分に分けて糸で縛って血流を遮断し、数日後に自然に脱落させる方法です。本来ならば術後の痛みが強いですが、持続麻酔薬を注射しておくことにより、ほとんど痛みで苦しむことはなく、日常生活も普段通りに行えます。

患者様の痔の種類や大きさ状態に合わせて最も適切でなおかつできるだけダメージの少ない治療法を勧めて行くようにしています。しかし痔は命にかかわる病気ではありません。
奥に大腸癌や癌の元になるポリープがあった場合は命にかかわってきます。自分の症状を痔だと決めつけずに排便時出血や肛門の違和感がある場合はできるだけ大腸内視鏡をするようにお勧めしています。

切れ痔について

硬い便や勢いよく出る下痢などにより肛門の皮膚が裂けるのが原因です。
女性に多く20 - 40歳代に多く見られます。
排便時の痛みが強く出血も見られます。便秘の人や肛門の緊張が強い人がなりやすい傾向にあります。
裂肛はよく見られる肛門の病気ですが、習慣性に裂肛が起こり慢性化すると深く掘れた肛門潰瘍になったり、肛門ポリープやみはりいぼなどができたりします。さらに進行すると肛門潰瘍から痔瘻ができたり、肛門括約筋まで炎症が 及んで硬くなり肛門が狭くなる事もあります。

裂肛には急性期と慢性期があり、この状態によってお薬で治せるか手術が必要になるか異なってきます。

急性期の治療法

基本的にお薬による治療です。症状は強くても肛門が狭くなく、みはりいぼや肛門ポリーブや深い潰瘍がなければお薬で治ることがほとんどです。

軟膏治療

ボラザGなどの裂肛部分の上皮形成を促し痛みを抑える軟膏を肛門内に注入します。朝の排便後と寝る前に 入れて下さい

下剤等の便通コントロール

便秘で硬便が出る人はせっかく裂肛を治しても1回でも硬便が出て切れてしまうとまた振り出しに戻ってしまいます。便秘の人は裂肛が完全に治る3週間ぐらいは便通に気をつけて、1日でなければ次の日には必ず便が出るように下剤を服用して下さい。下痢がひどい人はその原因も調べ、下痢止めや整腸剤が必要です。

痛みで便を我慢しないように、軟便にコントロールして排便時に肛門をリラックスさせるように心がけ てください。

慢性期の治療法

前述の急性期の治療に加えて、裂肛にどのような合併病変があるか、肛門が狭くなっているかによって治療内容が異なります。

1:みはりいぼ・肛門ポリーブ・肛門潰瘍

慢性的な裂肛により周囲の組織が盛り上がってできるイボで、大きくなると擦れて痛みが出たり、肛門ポリープが脱出してきたり、脱出するたびにどんどん潰瘍が深くなり痛みが酷くなってくる場合があります。(随伴性裂肛)

手術方法:

振り分け結紮術(痔核の治療方針を参照)

出来るだけ術後の痛みや麻痕を少なくするため肛門潰瘍の部分も含めて糸で縛って自然に脱落させます。持続麻酔薬(痔核の治療方針を参照)を使用しますので術後の痛みもほとんどありません。糸が脱落するのに10日から2週間、傷がきれいに治るのに約6週間です。その間は仕事も排便も入浴も通常通り行えます。

2:肛門狭窄

裂肛による炎症が長期化することにより括約筋まで瘢痕化して肛門が狭くなる事があります。鉛筆ほどの太さの便しかでなくなる事もあります。

手術方法:まず狭くなっている原因である肛門潰瘍、肛門ポリープ、みはりいぼ等があればそれらを併せて切除します(図1)

さらに硬くなった組織を切開して十分に広げておく(図2)。この広げた状態で肛門上皮の欠損範囲の広さによって次の(A)(B)のどちらの方法にするか決定する。

(A) 皮膚弁移動術

欠損範囲が十分縫い合わせられる程度であればこの方法で行います。
縦に切開して十分広げた横方向に縫い合わせていきます(図A-1)
縫合した部分の外側につっぱり感を和らげるため皮膚に浅い切開を加えて完成です(図A-2)

(B) V-Y肛門形成術

欠損範囲が広く十分に縫い合わせられない場合はこの方法で行います。
広げた肛門の上皮欠損部分の外側に図の様な形に皮膚を切ります(図B-1)
切りとった皮膚を肛門の奥に滑り込ませて欠損部分を覆います(図B-2)
すべての皮膚を縫い合わせれば完成です(図B-3)

痔瘻について

痔瘻とは昔から穴痔(あなじ)とも言われ、細菌感染が原因で肛門の周囲に小さな穴ができ てそこから膿が出る病気です。肛門周囲膿瘍が完全に治り切らない場合、痔瘻になります。
通常肛門と直腸の間にはポケットのようなくぼみがあり、下痢したりするとそこから便や細菌が入り込んで膿がたまり、肛門周囲膿瘍となって肛門周囲の皮膚に穴があいて膿がでます。
この肛門周囲膿瘍が治っても肛門の奥のポケットから皮膚までの道が残って膿が少量ずつ出続けることがあり、これを痔瘻といいます。痔瘻は通常ほとんど痛みません、肛門周囲の穴から毎日膿がで続けるため肛門周囲がいつもジクジクしてかぶれたりします。


痔瘻は放置しておくと、最初肛門周囲に一つだけだった穴がいくつも増えてくることがあります。これは痔瘻の複雑化といって、どんどん穴が増えて迷路のように広がり、治療しても再発が多くなかなか治りません。つまり治療の原則は複雑化してしまう前に手術で完治させてしまうことです。また痔瘻が複雑化して何年も炎症が続いてる場合、痔瘻の部分にまれに癌ができることがあります(痔瘻癌)。痔瘻ははっきりした原因は不明ですが、下痢したり便通 に異常がある時に起こりやすく、男性の方が多いのが特徴です。

痔瘻の治療

痔瘻の治療の原則は手術です。肛門周囲膿瘍がある場合はまず切開して膿を出し、感染がおさまってから痔瘻になるのかそのまま治ってしまうのか様子を見ます。痔瘻になっ てしまった場合は複雑化する前に手術した方がいいです。感染がひどい時にはまず抗生 剤で感染を抑えてから手術します。

切開開放法

痔瘻が比較的浅い場合に行います、括約筋を切断することなく痔瘻の膿の通り道を切り開いて切除します。
切除した部分が治るのに3-4週間かかりますが、その間 も仕事や排便、入浴等は通常通り行えます。
痛みも持続麻酔薬を使用するためほとんど気になる事は ないです。

括約筋温存壊孔切除術

括約筋をなるべく切断しないようにして痔瘻の膿の通り道をくり抜くように切除する方法です。
再発率がやや高いとの報告もあり当院では殆ど行いません。

痔瘻結紮術(シートン法)および括約筋外瘻孔切除

痔瘻の原因になっている肛門の奥の穴(肛門陰窩)から、膿が出てくる外の穴までゴムひもを通し、ゴムが縮む力を利用して括約筋を少しずつ切断しては修復されてゴムが緩んでいきます。
このときに括約筋の外に広がる瘻孔(膿の通り道)は出来るだけ切除し、他に枝が隠れていないかも十分に調べて再発しないように注意します。

3週間毎にゴムひもを締めていくと括約筋は切断されることなくゴムが移動し自然に脱落するまで2~数ヶ月かかります。
切除した部分から浸出液が出ますのでナプキンなどをあてて対処していきますが1ヶ月でほとんど出なくなります。その間も仕事や排便、入浴等は通常通り行えます。痛みも持続麻酔薬を使用するためほとんど気になる事はないです。

肛門の奥の腸の入り口から括約筋を貫いて痔瘻が肛門の外までつながっています。

括約筋の外を通る時(膿の通り道)を他に枝が隠れていないか注意しながらすべて切除します。

括約筋を貫いている部分の痔瘻にゴムひもを通します。
ゴムが縮む力を利用して括約筋を少しずつ切断しては修復されてゴムが緩んでいきます。

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